blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

カテゴリ:M&A

Max India's plan to sell speciality films business to German firm in trouble

今日は記事をきっかけに思い出したことがあったので、それを書きます。

記事自体は、Max Indiaというインド企業がその映画事業をドイツ企業に売却するに際し、価格も含め法的拘束力のない合意を結んだが、近時同部門の業績が悪化したので、買収者側が価格の大幅な減額の申し入れをしている。ただ、Max India側はそれを受け入れるのは難しいだろう、という記事です。

これ自体は読み飛ばしてしまいそうな話なのですが、以前、インド企業とのM&A交渉で気をつけなければいけないのは、インド側は買収交渉を有利に進めるため、意図的に交渉状況をマスコミにリークし、商業主義的な新聞社側もそれに乗ってしまう傾向がある、という話を聞いたことを思い出しました。確かに、いわれてみると、いわゆるM&A交渉中の情報、と思われる記事が、日本に比べて結構多く新聞に載っているように思われます。大体、その場合、記事の中でも情報ソースは名前を明らかにしません。 

こんなことを意図的にやっているとすれば、相場操縦とか風説の流布とか、日本法では問題になりそうですし、 SEBIの年次報告書でも、インサイダー取引とかよりは、Market Manipulation and Price Riggingというものの方が調査開始件数が多かったと記憶しています。このあたりは、インド人創業家(orその関係者)の遵法意識が低いのか、SEBIの検挙が甘いのか、その両方なのか、よくわかりませんが、いずれにせよ、日本企業がインド企業を買収する際にも、注意が必要な部分だと思います。

Sebi clears Diageo-United Spirits deal with riders

過去記事 Diageoによる買収、SEBIだけでなく公取も注目

以前書いた件ですが、どうやらSEBIは条件付でOKを出しました。以下が簡単な事案の概要です。

買主:Diageo(ロンドンを本拠とする世界最大の酒類メーカー)
売主:USLの現在の大株主で、Kingfisher航空を持つVijay Mallya氏(とその持株会社UBHL)
対象会社:United Spirites Limited(USL。インドの上場企業) 
取引:DiageoがMallya氏の持株取得とUSLからの新株発行をあわせて27.4%を取得、それとは別途公開買い付けを行い一般株主から26%を取得しUSLの過半数取得を目指す。

もともと今年の1月7日に公開買付けが開始される予定でしたが、SEBI(金融庁)とCCI(公正取引委員会)からストップがかかっていました。SEBIとの関係では、当初の売買契約に含まれていた条項(公開買付けで過半数が取れなかったら、4年間、USLの議決権行使をDiageoに委託する)の削除が承認の条件とされたようです。
一方、CCIはまだ承認に必要な情報が提供されていないため、それを待っている、という状況のようです。

Mallya氏のUBグループは、参加のKingfisher航空の不振などが響いて、昨年3月現在で2300億ルピーの負債に苦しんでいます。今回の代金も一部は負債の返済に回し、一部はKingfisher航空の事業再開のための資金に回すようです。 

ちなみに、公開買付けの買付価格は現時点では1株あたり1400ルピーほどですが、市場では、本件の情報が漏れていたためか、昨年11月ころから株価が急騰し現在は1900ルピーほど。Diageoが価格を引き上げると見込んでいるようです。SEBIは公開買付価の引き上げを要求できる権利を持っているのですが、今回の売買契約にはその場合はDiageoが公開買付けを撤回できると定めているため、関心を集めていました。ただ、SEBIはこの条項については契約に残すことをどうやら認めたようです。

Competition Commission to look into Diageo, USL merger

過去記事
合弁契約中のPut optionの有効性、SEBIが争う

先日、上記のM&AがSEBIから注目されていると書きましたが、どうやら独占禁止法を扱うCCI(Competition Commission of India)も同じくこの件を注視しているようです。そもそもM&Aに他国のような独禁法の観点からの審査が始まったのが2011年6月。そこから100件ほどの買収に関する審査が行われており、平均して3週間程度で承認が下りているそうです。法令上は、当事者による申請から210日を経過すると自動的に承認が下りたものと見なされるようになっていますが、それよりはかなり前倒しで案件が処理できているようです。

実態として、買収者のDiageoのシェアは3%ほど。USL自体のシェアが大きいので、足すと60%に近づくようですが、専門家はおそらくCCIの審査は通過するだろうと見込んでいますが、そのプロセスでクロージングが遅れていることは確かなようですので、ビジネス上の影響は否定できません。ある程度の件数の積み重ねによりCCIの実務は予見可能にはなっていますが、大型M&Aの際には日本企業も注意が必要です。

なお、本件が注目を集めているのは、売主のUB groupのPomoterのMallyaが現在経営悪化で航空免許を停止されているKingfisherを保有しており、こちらに売却代金を当てるのではないかと見込まれているからのようです。Kingfisherの件はまた後日取り上げたいと思います。



Sebi to ask Diageo to rework on clauses in United Breweries Group agreement, says it violates local rules

合弁契約書によく含まれる条項として、Put Option/Call option条項というのがあります。
合弁事業というのは、2つの異なる会社がそれぞれの特長を生かして一緒に事業を行うため、ひとつの会社を設立してそれぞれの会社が株主になるわけですが、途中で双方の思惑が会わなくなったり、合弁事業がうまくいかなかったりして、合弁をやめようという事態になることも少なくはありません。で、そのときになって、どちらが何%をいくらで買い取る、、という話になると、大体の場合双方の視点がずれていて合意に至るのが難しいため、そもそも合弁契約を締結した際に、そういった際には、どちらかが相手の株式を買い取ろう、という合意がされますが、これがPut Option/Call optionです。前者は自分の持っている分を一定の条件で「買い取れ!」と言える権利、後者は逆で相手の持分を一定の条件で「よこせ!」と言える権利ですね。

日本やアメリカなどの合弁契約では、一般的な条項だと思われますが、ここインドでは、この有効性が争われています。

United Spriritsというブランデーやウイスキーを製造する合弁会社の株主(UB Group)が、昨年持分の一部を合弁相手(Diageo)に売却した際、Diageoの持分が過半数を超えてから7年以内に、自己の持分の全部又は一部を合弁会社に対して買取を請求できるPut Optionを設定しました。

これについて、SEBIは、このPut Optionはインド法が禁止するForward contract(先物の契約、とでも訳せましょうか)に当たるから、違法だと主張しているそうです。今回のPut Optionは、これに当たるのに、市場外で価格を決めて売買することになるから、違法だ、ということのようです。

この点につき、ボンベイ高裁は、Optionではオプション保有者はオプションを行使するどうかは権利であり、相手方から行使を義務付けられることはないため、この点で、条文上予定されるForward Contractとは異なると言う判断を示しています。
もっとも、さらにこのオプションが、別の条文で規定されるContract in Derivertiveに当たり、やはり違法という議論がるようで、SEBIはこちらに依拠しているのではないか、と思われます。(ちょっと記事からもよくわからないので、引き続き勉強したいと思います)

(1月14日追記)
気になったので、少し判例も調べてみました。
ボンベイ高裁では、オプションを含む契約を結んだときは、まだオプション自体は行使されるかどうか決まっておらず、オプションが行使されて始めて株式売買の契約が成立すると捕らえ、オプションを含む契約を結んだと時点では法律の禁止するFoward Contract(SEBIからのNotificationでさらに定義されています)に当たらないと解釈します。ただ、これが最高裁に上がった際、結局、両当事者が別途話し合いで紛争を解決することとしこの論点を正面から最高裁は判断していません。また、上記オプション解釈についてのボンベイ高裁判決は、最高裁の判断を拘束しないことも、両当事者で確認しています。
ただ、事案としては、SEBIのルールに沿って事業をスタートしようとした証券取引所が、取引所規制のひとつである特定株主の持分の5%制限に沿おうとして、Promoterが銀行などに株式を分散して売却した際、その合意にExit optionが含まれていたところ、それをSEBIがForward Contractだといって、取引所にライセンスを与えなかった、という事案なので、通常のM&Aとは少し異なる文脈であったかもしれません。



このページのトップヘ