blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

カテゴリ: 刑事事件

Delhi gang rape: Anger rises in city as victim sinks

日曜夜に、インドの首都、デリー南部で非常に悲惨な強姦事件がありました。記事によれば、被害者は23歳の女性、今も危篤状態が続いています。声を出せないと思われる被害者が「お母さん、私は生きたい」と紙に書いたそうです

これを受け、昨日、デリー中心部で大学生が中心になり、女性の安全な生活が脅かされているとしてデモが起こりました。 (テレビでニュースを見た限り、女性だけでなくたくさんの男性も参加していました)犯罪行為自体に対する怒り、強姦を規制する刑事法の不十分さや厳罰化の声、警察の捜査・パトロール活動の不十分さに対する不満、非常に時間がかかる司法手続きの問題点など、様々な問題点が指摘されているところです。
これを受けてデリーでの強姦を迅速に・専属的に扱う裁判所の設置などの動きがとられようとしていますが、まずは、このような犯罪を起こさないことが大切。自衛の方法や犯罪者側の心理などを扱う記事も続いています。

また、多数の女性を雇用する企業側としても、如何に女性の安全を確保するかが非常に大きな議論となっています。

Delhi gang rape shakes up corporate India; companies take stock of women employees' safety

仮に通勤途中に従業員が犯罪行為の被害者となっても、それが故意犯である強姦罪であれば、日本の感覚としては企業側に法的責任まで認められることは通常はなさそうですが、そうは言っても、多くの労働者を雇う企業としては、社会的責任として、何らかの対応をとらないわけには行かない、というところでしょうか。

Another inquiry to decide on action against Palghar cops

少しカバーするのが遅れましたが、実は先日のBal Thackeray氏の死去に関して、興味深い事件が起こっていました。
有力政治家、バル・タカレー氏死去。ムンバイの都市機能停止

都市機能が停止したといいましたが、この件について、「何で一人の人が亡くなったことでこんなに大事になるの」という趣旨の批判的なFacebookの書き込みをした女性と、それについて「いいね」を押した女性が、なんと逮捕されていたのです(確かもとの投稿自体、すぐに本人が言いすぎたことを認めていたかと思います)。Information Technology Actという法律が2008年に改正された際、"sending offensive messages through communication service"が犯罪とされたのですが、これを適用したとのこと。
これに対し、それはやりすぎだろうと各方面で批判が集中し、結局女性2人はすぐに釈放されました。ただ、事態はこれでは止まらず、 担当の捜査官は"unjustified"なことをしてしまったというレポートを提出しました(させられました?)。人権侵害の犯罪行為だという主張が続き、捜査官を刑事訴追だという声もあります。

この件については批判を受けて、政府当局もガイドラインや命令を出すべきだとされていますが、まずは法令解釈についての意見書を求めるようです。

ただ、"sending offensive messages through communication service"という法律の規定は、ガイドライン等で明確化する以前の問題として、そもそも非常にあいまいな気がします。本件で批判が上がるのはもっともなのですが、2008年の改正時にどのような議論がされたのでしょうかね。このような広い規制を必要とする社会的な背景がなにかあったのでしょうか。

http://www.hindustantimes.com/India-news/Mumbai/26-11-villain-Ajmal-Kasab-hanged-Pak-stops-journalists-from-entering-his-village/Article1-962152.aspx

ビジネスとは直接関係ないですが、今日はこの話題を。2008年11月26日、ムンバイのタージマハルホテルを10名のパキスタン人のテロリストが襲撃し、計166名が死亡するという悲劇がありました。その犯人で、唯一生きたまま逮捕された犯人、Ajmal Kasab氏(25歳)が水曜の午前、ムンバイ郊外のプネというところで絞首刑に処せられました。この悲劇の4周年が迫ったこの時期の死刑執行は大きな注目を集めており、一面記事で大きく扱われています。混乱を避けるためか、かなり秘密裏に行われたようで、これが人々の驚きにもつながっているようです。

そもそも世界的に見ると、死刑制度が存続し、且つ実際に実施している国はそんなに多くはないと思うのですが、インドはその中に含まれていたんですね。ただ、最近の執行としては2004年のコルカタでの執行が最後で、ムンバイのあるマハラシュトラ州でいうと1995年が最後とのことだったので、ちょくちょくニュースで死刑執行の報道が流れる日本と比べると、インドではかなりまれなケースということができそうです。インドにおける外国人の死刑執行としては初のケース、そして、時間がかかることで有名なインドの裁判所ですが、この事件から4年で死刑執行というスピードは、過去2番目に早いそうです。

このテロは、アメリカ同時多発テロの911のように、26/11と日付で表記され、特にムンバイにいるインド人の心には深く記憶が残っていると思われます。記事には、処刑に使ったロープの長さや何キロまで耐えられるか、誰が作ったという情報や、彼を処刑まで生かしておくコストが170万ルピーぐらいかかったとかの情報もありますが、このあたりからもなんとなく、インド人のこの事件に対する感情が垣間見えます。
ちなみに、私の運転手は、このテロの際、ホテルの駐車場にいて、警察とテロリストが戦っている間、同じく現場に居合わせてしまったほかの運転手と一緒に、地下のトイレに避難していたそうです。事件の後は、本当にあたり一面血の海だったとか。彼は本当にいい人で、この事件で犠牲にならなくてよかったと思います。


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