blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

カテゴリ:汚職

Cabinet approves Lokpal Bill amendments; Govt not serious on giving autonomy to CBI, BJP says

インド社会における問題の大半は、公務員の汚職が絡んでいるのではないかと思いますが、その汚職を撲滅しようという法案が上院の審議にかかるそうです。

この法案、2011年にすでに下院を通過していたのですが、政党間の意見の違いが大きく、上院にかかる前に特別な委員会の検討を経て、その推薦を受け政府が法案を修正するか、という段階に至っていました。修正を経たので、上院の採決がされても、再度下院にまわされることになります。

内容としては、賄賂を罰する実体法的な内容ではなく、違反者を訴追するための手続的な仕組み(Lokpalとは、独立したオンブズマンのイメージです)を確保するための法律です。インドにおいてありがちな話ですが、大体の分野において法律自体は存在するので、それに沿っていない現在の社会は違法状態なのですが、法律を実際に執行、訴追する機関が非常に貧弱で法律どおりの社会になっていない、というのがインドの実情です。

記事は、政府が懸案の論点について委員会の推薦を無視して採決に向かおうとしていると野党が批判していると報じています。 嫌疑が上がった役人に捜査開始前に意見聴聞の機会を保障するかという点と、捜査を実務的に行う担当官(CBI)の配置にLokpalの同意を必要とするか、という点です。委員会と野党は、前者はこれを認めると証拠隠滅が行われるから認めないべき、後者はこれを必要としないと担当者が次々移動となり捜査が妨害されるから必要とすべき、としましたが、政府案はいずれもこれを受け入れないようです。

3 US entities lobbied on tax plan
Wal-Mart just one player in the giant US lobbying game

この話題ばかりになってしまいますが、引き続き関心が高いようなので。
Walmartは2008年以降、様々なロビイング活動に2500万ドルを払っていた、というのは前から報道されていましたが(Walmartの米国でのLobbying費用、使途は如何に?)、当然、ほかのインド進出を狙う米国企業・団体も相当の費用を使ってたとの報道。記事に挙がっている一例です。
  • ロビイング団体のFinancial Services Forum, Business Roundtalbe, Financial Executives International:今年提出された税金・予算関係法案に関する活動
  • Boing, AT&T, Starbacks, Lockheed Martin, Eli Lilly, GE:「特定のロビイング事項」(インドにおける市場開放やサポート)
  • Pfizer:ジェネリックの価格設定についての最高裁決定
  • Prudencial Financial:インドの金融市場へのアクセスやエクイティの所有について
アメリカには、これらのロビイング活動について、登録をして四半期ごとに開示をさせるという規制がありますが、インドにはありません。で、Infomation & Broadcastingの大臣は、これを受けて、アメリカのような仕組みをインドも導入すべきでは、ということを個人的な意見として、言っているようです。

これを見て思ったことは、こんなふうにやってるから、とりあえず立法案だけ、そして実際には適用されていない法律だけ、どんどんできるんだろうな、この国は、、ということです。
たとえば、ここ数年で贈賄防止関係の法案自体は、10くらい国会にかかっているそうですが、まだどれも国会を通っていません。はたから見てると、今ある法律をきちんと運用することの方が10倍意味がある気がするのですが。。。

Government orders probes into Walmart lobbying issue; supermarket chain says graft US-centric

このブログでも複数回取り上げているWalmartのFCPA(米国外国公務員贈賄防止法)違反の件ですが、さらに新しい動きが。

ウォルマートがインドで米国外国公務員贈賄法違反か
Walmartの贈賄調査続く。贈賄なしにインドビジネスは可能か?

先日、米国のWalmartが4年間で25億ドル(後日訂正:USD 25 Millionでした)をLobbyingに使っていた、そのうちにはインドへの進出に関するものも含まれる、ということを明らかにしました。複数ブランドの小売規制が緩和されたこともあり、インドでもWalmartの動向が気になっているのですが、参入に反対の野党は、 退職した裁判官を指名してこの件を調査すべきだと主張。どうやら、与党側もこれに応じるようです。当然、インドの合弁会社Bharti Wlamartは、親会社のLobbying費用は(インドの公務員への接触に関するものではなく、)米国での役人に対する費用に限られている、と今のところは答えています。。上記の開示も、米国でのLobbyingに関する開示規制に従ったまでだ、とのこと(年間11500ドル以上の費用は開示が必要)。

先日公表されたTransparency Internationalという機関の汚職認識指数2012年版では、インドは昨年とほぼ同じで170国あまりの中で、94位。まだまだ汚職の問題は大きい国ですね。

CORRUPTION PERCEPTIONS INDEX 2012

さらに実は、Walmartには、もう一点外資規制に絡む問題があります。現状、 インドの合弁会社であるBharti Wlamartは、小売ではなく、先に外資規制が開放された卸売事業、ということで事業をしていますが、それに関するWalmartによる45.5億ルピーの投資について、RBI(インドの中央銀行)に対して、記録が提出されておらず、外資規制違反ではなかったか、という点も指摘されています。こちらは、Bharti Wlamartとして数年すでにビジネスをしていたのに何をいまさら、、という感じもしますが、Walmartのインドにおける注目の高まりを示していると思います。

ipaidabribe.com: A website allows Indians to post their bribe experiences

インドの腐敗の問題は、先日Walmartの報道についても書きましたが、今回は、これをいかに防ぐか、という一つのチャレンジについてです。

I Paid a Bribe

こちらのサイトでは、公務員の汚職によりこんな被害を受けた、という内容を匿名で一般の人がアップできるようになっています。一昔前に有名になたWikiLeaksに少し似ているかもしれません。バンガロールにあるNGOが開設したサイトで、贈収賄に関する情報を共有することにより、少しでも汚職を減らしていこうということを目的にしています。今のところ、500の都市から、20000件を超える報告がされており、インド以外の外国も興味を示しているそうです。

実際に、このサイトの情報を使ってバンガロールの輸送委員会がその手続きを改善し、ライセンス申請手続きをオンライン化するなど、自動化を進めて間に入る人の手を減らすことで、汚職を減らそうとしているそうです。この観点は非常に重要で、結局のところ、人の手が間に入る機会が増えれば増えるほど、特に下級の公務員からの贈賄要求のリスクが高まると思われますので、その意味で、インド得意のITを駆使して、どんどん手続きのオンライン化を進めてもらいたいところです。(インド国内のIT需要がますます高まる効果も期待できますよね。) 

記事によると、やはり行政と警察の汚職が数値的には一番ひどいようです。
汚職の背景としては、インドでは、実は表現の自由があまり尊重されていないこと(オンラインの世界でいえば、先日のFBの投稿と「いいね」に対する行き過ぎた逮捕、批判相次ぐもご参照)、民主主義のための制度(警察、司法など)が実はその助けが一番必要な貧困層にある大多数の国民には行き届いていないことなどが考えられるそうです。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/services/retail/anti-bribery-investigations-wont-tolerate-any-violation-says-walmart/articleshow/17286691.cms

先日の報道(ウォルマートがインドで米国外国公務員贈賄法違反か)に続き、Walmartのインド現地法人も、本件に関して記者の問い合わせに答えています。もちろん、法律に形式的に沿うだけでなく、人の誠実さに関するより高度な水準を満たすように活動すると。他方、他の関係者は懐疑的です。以下の声が、インドの現実なのだと思います。

 「みな、Speed moneyを払っている。それをSpeed moneyと呼ぶか賄賂と呼ぶかは別にして、いずれにせよ同じものだ」
「賄賂を払わなければ、忍耐づよく、大声を上げ、かつより高い権威に頼る必要がある」 
「多くの会社はライセンスを扱うエージェントを使っていて、このエージェントは彼らのしたいことを何でもすることができる」 

別の記事では、小売業をスタートするには、31の当局から51のライセンスの発給を受ける必要があるとか。。このたびにお金をよこせと公務員に要求されるとなると、本当にやってられませんね。 世界銀行によるビジネスの容易さのランキングでも、なんと185か国中132位とか。

 他方、米国の外国公務員防止規制違反を問われた場面への対策という意味もあるのでしょうが、Walmartはすでに国際的な会計事務所であるKPMGを使って、従業員の教育をしたり、Venderの法令順守について証明させたりもしているようです。日本企業もこのあたりの意識を高めておく必要があります。

http://timesofindia.indiatimes.com/india/Wal-Mart-probing-charges-of-bribery-in-India/articleshow/17249461.cms


 ちょっと話が複雑ですが、A国の公務員に対して、A国において(その他の場所においても)、B国人やB国の法人が賄賂を渡した場合、B国の刑事法で処罰される、という法律が多くの国にいおいて整備されつつあります。もとは、アメリカのウォーターゲート事件を契機に米国が最初に国内法を整備したのですが、これでは米国企業だけが(外国公務員に賄賂を渡せなくて)海外市場での競争力が落ちて不公正だ、ということでOECD(経済開発協力機構)に提言し、各国が国内法を整備したという経緯があります。日本にも、不正競争防止法にこの規制がありますが、今のところ、厳格に運用されているとはとてもいえない状況です。(裁判で有罪判決が出たのは、2件)

今回の記事は、この米国法に、米国企業であるウォルマートが、過去、インドで行った行為について違反しているかもしれない、というリリースを出したとのこと。このアメリカの法律は、近年、厳格に運用がされるようになっており、100億円を超える制裁金を支払うケースも出てきています。この刑事制裁に加え、まだ詳細は明らかではありませんが、開放されたインドの複数小売市場への投資をもくろんでいたウォルマートにとって、インド市場への進出という意味でも、大きな痛手になるかもしれません。

とはいえ、インドに来て思うことは、多くの日系企業も、インドの公務員から要求される賄賂の問題に直面して、非常に苦労しているということです。インドに進出すること自体で、かなりのリーガルリスクをとってしまっているといわざるを得ないかもしれません。とはいえ、公務員の汚職の問題自体は、インドに限った話ではなく、他の途上国へ進出する際も同じ問題に直面しているはず。ただ、では、だからといって、海外進出をやめるかという話にはならないはずですので、このあたりは、何らかの対応策を考えなければなりません。

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