blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

カテゴリ: 外資規制

We will build a robust control environment for our India business| Erick Haskell
Adidas gets a new MD, Reebok India a New Life

ちょうど、前回少し触れたアディダスの件で続報がありました(SEBI、一定規模の海外子会社の強制的会計監査を検討中)。中国法人のCOOだった人が今度のインドのMDになるようで、そのインタビュー記事が掲載されています。

以前のインドの経営者のMDとCOOが、隠し倉庫を作ってそれを商品を横領していたと言うのがReebokに関する不正内容だったようです。これにより、300の店舗を閉鎖したとか。事件内容は現在も調査中で、定時株主総会の開催も遅れています。ただ、新しいMDは、事件はビジネス上の問題だったが、Reebokブランドに対する影響はない、と言い切っています。

詳細はわかりませんが、どうやら現地は自分の法人ではなくフランチャイズで経営していたようで、「フランチャイジーの出資額の18%」という固定額がフランチャイジー側の報酬だったようです。でこれを、「売り上げの35%」という形にするとか。どういう経緯で以前の契約がされたか不明ですが、これだとMDらからいくばくかのお金をもらえば、不正行為に加担しやすい構造だったと言えそうな気がします。 

そして、単一ブランドのFDI規制が緩和されたことも受け、今後は間もなくFDIにより直接法人を持つことを計画しているとのことです。クリケットの大きな大会にあわせ、新しいマーケティングも計画していると言うことで、トップを入れ替えてネガティブな印象を一掃する方針と言えそうです。


Ikea’s meatballs may be on its Indian menu after all
Hungry for FDI in retail, Govt likely to accept Ikea's global model

前回の記事(IKEAの製品、実は半分しか承認されておらず。家具以外はNG?

インド最規模の小売業への外資参入であるIKEA。先日は、当初の予定の半分の商品の販売しか政府からOKがもらえなかったとお伝えしましたが、ここに来て、IKEA側が盛り返してきました。
単に家具だけでなく、それ以外の生活雑貨などの販売や店舗内でのカフェの運営すると言う業態について、これ全体がIKEAが世界44カ国で展開しているビジネスもであるである!ということを政府関係者に対してプレゼンテーションをしました。これを受けて、商工省の大臣も、そりゃそうだよね、IKEAの意向に沿った形で承認できるよう、手続きを進めたい、という意向を表明したそうです。

一個目の記事にもあるように、元はと言えば、この問題は、FDI規制にある、複数ブランド小売と単一ブランド小売って、そもそも何?という定義が存在しないことに端を発しているようです。政府としては、当初単一ブランド小売とは、そんなたくさんの種類の商品を売ることを想定していなかった、であるとか、単一ブランド小売は食品を売ることを想定していないからレストランはNGであるとか言っていたようです。ただ、IKEAとしては、世界中でこの形でやってるし、別にぽつんとレストランだけを作って地元のレストランと競合しようという意図もないですから、まあIKEA側の言っているとおりと。

そもそも今年9月の単数ブランド小売規制の緩和(ブランドを自身が保有していなくてもライセンスを受けていればOK、地元業者から30%以上の仕入れを義務から努力義務に緩和)も、IKEAからの強い要求を受けてのものであり、それは当然、19億ドルと言われる投資額がインドに落ちるという見込みがあったからこそともいえるので、IKEA側としては、結局認めてくれるんだったら、もっと早く進めてよ、、ということかもしれません。

とはいえ、今回のIKEAが先例となれば、単数ブランド小売の解釈が事実上広がったともいえるので、この部分は類似の業態の企業にとってはチャンスだと思います。

Government orders probes into Walmart lobbying issue; supermarket chain says graft US-centric

このブログでも複数回取り上げているWalmartのFCPA(米国外国公務員贈賄防止法)違反の件ですが、さらに新しい動きが。

ウォルマートがインドで米国外国公務員贈賄法違反か
Walmartの贈賄調査続く。贈賄なしにインドビジネスは可能か?

先日、米国のWalmartが4年間で25億ドル(後日訂正:USD 25 Millionでした)をLobbyingに使っていた、そのうちにはインドへの進出に関するものも含まれる、ということを明らかにしました。複数ブランドの小売規制が緩和されたこともあり、インドでもWalmartの動向が気になっているのですが、参入に反対の野党は、 退職した裁判官を指名してこの件を調査すべきだと主張。どうやら、与党側もこれに応じるようです。当然、インドの合弁会社Bharti Wlamartは、親会社のLobbying費用は(インドの公務員への接触に関するものではなく、)米国での役人に対する費用に限られている、と今のところは答えています。。上記の開示も、米国でのLobbyingに関する開示規制に従ったまでだ、とのこと(年間11500ドル以上の費用は開示が必要)。

先日公表されたTransparency Internationalという機関の汚職認識指数2012年版では、インドは昨年とほぼ同じで170国あまりの中で、94位。まだまだ汚職の問題は大きい国ですね。

CORRUPTION PERCEPTIONS INDEX 2012

さらに実は、Walmartには、もう一点外資規制に絡む問題があります。現状、 インドの合弁会社であるBharti Wlamartは、小売ではなく、先に外資規制が開放された卸売事業、ということで事業をしていますが、それに関するWalmartによる45.5億ルピーの投資について、RBI(インドの中央銀行)に対して、記録が提出されておらず、外資規制違反ではなかったか、という点も指摘されています。こちらは、Bharti Wlamartとして数年すでにビジネスをしていたのに何をいまさら、、という感じもしますが、Walmartのインドにおける注目の高まりを示していると思います。

Govt plans to set FDI cap on insurance cos at 26%, FIIs may be allowed to pick up 23%

冬の国会が始まって、気になる法案に関する動きが続いていますが、今日は、金融関係の外資規制です。

保険会社外資規制 上限を26%から49%へ

以前、保険会社の外資規制が現状の26%から49%まで上限が引き上げられる見込みだと上記で書きましたが、どうやら、この部分は与党が譲歩するようです。
銀行法、年金関連法案、マイクロファイナンスの法案など、金融関係の重要法案を通したい与党の妥協案として、保険法については、外資の保険会社が持てる割合は現状維持(26%)、ただ、保険会社ではない他の外国投資家が23%までは追加で保有してもいいよ(その結果、外資の合計は最大49%)、という形になる見込みとか。外資に49%までの支配を取られるのは嫌だが、何とかして外国資本に頼らないと国内保険会社的には厳しいというところが背景にあるようです。

なお、金融関係法案の全体的な方針としては、銀行法やマイクロファイナンス系では、RBI(インドの中央銀行)の監督権限を強めて利用者保護を図りつつ、保険や年金では、国内の会社の資本不足を外資に支えてもらう、というものです。


Retail FDI: India plans to amend its antiquated labour laws

小売市場の開放に向けた動きが加速しています。現在もFDIに関する事項が国会で議論されていますが、実際に小売事業をインドで進めるには、関連する規制も一気に緩和・修正する必要があります。たとえばあげてみると以下の感じです。

・24時間365日営業を可能にするための労働関連規制の修正
・過剰なライセンス制度の簡素化と小売事業者のためのライセンス関連窓口の一本化
・インドのもともとの小規模小売業者を排斥しないような規制の手当て
・農地転用を防ぐための土地使用政策のセーフガードの新設
・十分な商業地区を確保するための都市計画の改善
・インド全土を統一する物品サービス税(Good and Serivice Tax)の施行 

3つ目、4つ目は緩和とは逆方向の動きですが、現在のルール上は、ひとつの都市辺りに開業できる小売店数の上限がないことや、 店舗の規模の特定もないことから、外資参入に反対する勢力としては、非常に気になるポイントのようです。

もうひとつ、留意すべき点として、ここ数年、法令改正は続いてはいるものの、インドの法律はまだまだ時代遅れのものが多く、19世紀までさかのぼってしまうものも残っています。これの現代化が必要なのですが、他方、たとえば多くの労働関係法規やライセンス関係のルールは、州レベルのもので、中央政府が「えいやっ」で簡単に変更できるものではない、というところもポイントです。
こうなってくると、FDIの開放という動きがインドの連邦制という仕組み自体、だんだん変えてしまうのではないかという気さえします。翻って、日本を見ると、今は中央政府が権限を持ちすぎて「道州制」を導入すべきという議論ですよね。社会・経済の成長具合、それぞれの歴史が全く違うから当然なんでしょうが、おもしろい動きに思えます。

Foreign Investment Promotion Board to vet pharma M&As involving FDI

ここ数ヶ月、規制緩和で経済活性化、ということで外資規制を緩めていますが、どうやら分野によっては逆の動きも起きています。

製薬業界への外資規制は現在のところ存在せず、100%まで外国企業が投資できるのですが、この結果、ここ数年でインド国内のいくつかの大規模製薬会社が買収されました(たとえば、2008年の第一三共によるRanbaxyの買収など)。その結果、インド国内で流通していた安価な薬の価格が上がってしまい、薬を必要としている貧しい人たちが入手できなくなってしまいました。インド人の健康維持の観点から、これではまずい、という議論が進んでいます。

今のところ、このような外資を管理する方法として、外国直接投資(FDI)の上限を現在の100%から49%に引き下げること(これにより政府がどのような外資企業が入ってきたか、情報を把握できるようになる)、それとともに、日本で言うところの独占禁止法を改正して薬の価格の引き上げを制限することを検討しているようです。ただ、このような特定の業界だけを狙った競争法の改正が可能なのか、今は検討中とのこと。

このようなFDIの上限を下げる動きというのは、インドでは、各業界を通じて初めてです。インド人に聞いたところ、この議論自体、ここ2年位続いているそうですが、安価な薬を国民が入手できるという目的はもっともなものだと思いますので、おそらくこの規制自体は実現されるのではないかと思います。
業種によるのだと思いますが、このように、経済成長とは別の観点から、規制開放の流れとは逆行する動きもありうるという点は、特に関連する業界の方は留意しておくべきといえます。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/services/retail/fipb-denies-ikea-to-sell-half-its-products-in-india/articleshow/17329362.cms

先日、以下の記事を書きましたが、実はいろいろ条件がついていたようです。
IKEA、まもなくインド市場へ進出。複数小売事業者も続く
IKEA、小売としては過去最大、19億ドルの規模でインド進出

申請書に書いていた29の製品のうち、実際に許可されたのは、実は15だけ。Home-Office use product(文房具など)、消費者向けのパソコンなどの家電、布製品、おもちゃ、革製品、掃除用品、ビーチ用品、旅行用品に化粧品などは、全部NG。お店の中に自前のカフェを持つのも駄目とか。
IKEAとしては、自社で100%子会社を持って自社ブランドで海外と同じ展開をしようともくろんでいただけに、何で??という感じでしょう。この件に関しまだIKEAも法律事務所もノーコメントのようですが、果たしてこのまま進出と行くでしょうか。

果たしていかなる法的根拠に基づいてこのような拒絶がされたのか、現時点では判然としません。ありうる考え方として、そもそも「シングルブランド小売」「複数ブランド小売」といっていますが、実際には定義規定はないので、IKEAのビジネスのうち、一部は前者の範疇からはみ出ている、とみなされたのでしょうか。OKとされた14の製品も明らかではないのですが、インドの役所の判断として、ひとつのブランドで特定の種類の製品を消費者に売るのが「シングルブランド小売」であり、ここでいう「特定の種類の製品」とは、IKEAの場合、家具「だけ」だと、いうことでしょうか。

いずれにせよ、IKEAとしてはどうしますかね。IKEAの交渉力があれば政府に対し正面から「何でこれがいけないの?駄目ならインドに進出しないよ」と交渉できそうな気もしますが、他方、IKEAがすでに相当前からインド市場を狙っていたことからすれば、その結果がこれ(要は、むしろ14件の家具類を何とかOKさせることができた)なのかもしれません。まだ不勉強なのですが、このような政府のFDI(外国直接投資)の決定に対して不満がある場合、司法手続きに訴えることができるんでしょうか。

また、ここでNGとされた商品については、IKEAが他国と同じラインアップでビジネスしたいと思う場合、他の企業がIKEAと組むチャンスなのかもしれません。



http://economictimes.indiatimes.com/news/economy/policy/ikeas-rs-10500-cr-retail-proposal-gets-fipb-nod/articleshow/17295463.cms

先日も書きましたが、ついにインドにIKEAが進出することになります。外国投資に必要な政府の承認が火曜に行われたとのことです。実際には、120億ルピー以上の投資には内閣の経済事項委員会の承認も必要になりますが、政府は外資呼び込みのスタンスととることから、形式的なものにとどまりそう、との報道です。8億ドル弱と10年かけて10店舗を設置し、さらにその後は15店舗をオープンする計画ですが、そもそもインド国内にサプライチェーンと整えるのに3年を見込んでいるそうで、明日から直ちにIKEAの商品が買える、というわけには行かないようです。

今年9月にシングルブランドの小売業の規制も緩和され、100%投資に必要とされていたものの、不合理だと批判とされていた要件が緩和されました。今年4月から8月にかけての外国投資は前年比60%と落ち込んでいるようで、今後も外資の流入を期待しています。

とはいえ、一方で不穏な動きも。 野党のインド人民党などが属する国民民主同盟は、IKEAや昨日のWalmartまど、小売業への外国投資に反対する決議を国会できるようにするなどの方法で、反対する計画を立てているとか。こちらはおそらく、国内の零細な小売業者を保護する立場によるものと思われます。(巨大な外資がインド市場に進出すると、彼らが一気に職を失うため)

以前も書きましたが、インド市場の外資開放自体は、長期的には当然の動きだと思いますので、後はタイミングの問題だけかと。急速な開放は短期的にはインド国内に多少の混乱は生みそうですが、とはいえ、結果的にもたらされる外国の商品・サービスの魅力からしたら、インド人にも歓迎してもらえるはずです。

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http://economictimes.indiatimes.com/news/politics/nation/world-economic-forum-fdi-in-retail-is-cast-in-stone-says-anand-sharma/articleshow/17150878.cms

すでに日本にも進出しているスウェーデンのIKEAによるインド進出が、数日以内に政府に承認されるようです。商業産業大臣によれば、現在は、産業政策促進局(Depertment of Industrial Policy and Promotion)がIKEAの書類を審査しており、続いて、11月20日の外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board:FIPB)の審査となります。FPBIの後には、さらに、120億ルピーを超える場合にのみ必要とされる経済事項内閣委員会(Cabinet Committee on Economic Affairs)の手続きを経ます。
なぜそもそもこのような手続きが必要になるかですが、インドの外資規制上、外国ブランドの小売事業者がインドに投資については、自由に行うことができないとされているためです。IKEAは、自社のブランドでインド人顧客に家具を売っているため、インドのルール上、単一の海外ブランドで小売をする事業者として、取り扱われています。

さらに、現在、「卸売」事業として事業を行っている複数ブランド事業者も、複数「小売」事業に参入するようです。

やはりインドは、世界中から注目を集めるマーケットといえます。

http://www.hindustantimes.com/business-news/WorldEconomy/Retail-Reloaded-the-big-pic/Article1-950631.aspx

先月、インドの外資規制が緩和され、複数ブランド小売(スーパーやコンビニ) 業界への外資規制が、非常に厳しい要件ながら解禁されました。その結果、農家、卸売業者、小規模農家、輸入業者、バックエンド(倉庫業者)、フロントエンド、キラナ(インドに多数存在する個人レベルの小売業者)、そして消費者にどのような影響が出るかを簡単にまとめたのが今日の記事です。基本的には、インドの小売業界は小規模で非常に多くの仲介者がおり、非効率なので、これが合理化されれば、消費者は低価格で買い物ができるようになり、仲介者たちは職を失うリスクがある、ということかと思います。

 国際化社会のスピードからすれば、インドの外資開放の動きは当然の流れであって、国内の各当事者が影響を受けるのもやむなし、ということかと思いますが、短期的には不利益を受ける人も多数存在するわけで、政治的な影響も今後懸念されることと思います。

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