ちょっと話が複雑ですが、A国の公務員に対して、A国において(その他の場所においても)、B国人やB国の法人が賄賂を渡した場合、B国の刑事法で処罰される、という法律が多くの国にいおいて整備されつつあります。もとは、アメリカのウォーターゲート事件を契機に米国が最初に国内法を整備したのですが、これでは米国企業だけが(外国公務員に賄賂を渡せなくて)海外市場での競争力が落ちて不公正だ、ということでOECD(経済開発協力機構)に提言し、各国が国内法を整備したという経緯があります。日本にも、不正競争防止法にこの規制がありますが、今のところ、厳格に運用されているとはとてもいえない状況です。(裁判で有罪判決が出たのは、2件)
今回の記事は、この米国法に、米国企業であるウォルマートが、過去、インドで行った行為について違反しているかもしれない、というリリースを出したとのこと。このアメリカの法律は、近年、厳格に運用がされるようになっており、100億円を超える制裁金を支払うケースも出てきています。この刑事制裁に加え、まだ詳細は明らかではありませんが、開放されたインドの複数小売市場への投資をもくろんでいたウォルマートにとって、インド市場への進出という意味でも、大きな痛手になるかもしれません。
とはいえ、インドに来て思うことは、多くの日系企業も、インドの公務員から要求される賄賂の問題に直面して、非常に苦労しているということです。インドに進出すること自体で、かなりのリーガルリスクをとってしまっているといわざるを得ないかもしれません。とはいえ、公務員の汚職の問題自体は、インドに限った話ではなく、他の途上国へ進出する際も同じ問題に直面しているはず。ただ、では、だからといって、海外進出をやめるかという話にはならないはずですので、このあたりは、何らかの対応策を考えなければなりません。