blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

2012年11月

http://timesofindia.indiatimes.com/india/Wal-Mart-probing-charges-of-bribery-in-India/articleshow/17249461.cms


 ちょっと話が複雑ですが、A国の公務員に対して、A国において(その他の場所においても)、B国人やB国の法人が賄賂を渡した場合、B国の刑事法で処罰される、という法律が多くの国にいおいて整備されつつあります。もとは、アメリカのウォーターゲート事件を契機に米国が最初に国内法を整備したのですが、これでは米国企業だけが(外国公務員に賄賂を渡せなくて)海外市場での競争力が落ちて不公正だ、ということでOECD(経済開発協力機構)に提言し、各国が国内法を整備したという経緯があります。日本にも、不正競争防止法にこの規制がありますが、今のところ、厳格に運用されているとはとてもいえない状況です。(裁判で有罪判決が出たのは、2件)

今回の記事は、この米国法に、米国企業であるウォルマートが、過去、インドで行った行為について違反しているかもしれない、というリリースを出したとのこと。このアメリカの法律は、近年、厳格に運用がされるようになっており、100億円を超える制裁金を支払うケースも出てきています。この刑事制裁に加え、まだ詳細は明らかではありませんが、開放されたインドの複数小売市場への投資をもくろんでいたウォルマートにとって、インド市場への進出という意味でも、大きな痛手になるかもしれません。

とはいえ、インドに来て思うことは、多くの日系企業も、インドの公務員から要求される賄賂の問題に直面して、非常に苦労しているということです。インドに進出すること自体で、かなりのリーガルリスクをとってしまっているといわざるを得ないかもしれません。とはいえ、公務員の汚職の問題自体は、インドに限った話ではなく、他の途上国へ進出する際も同じ問題に直面しているはず。ただ、では、だからといって、海外進出をやめるかという話にはならないはずですので、このあたりは、何らかの対応策を考えなければなりません。

http://economictimes.indiatimes.com/news/politics/nation/world-economic-forum-fdi-in-retail-is-cast-in-stone-says-anand-sharma/articleshow/17150878.cms

すでに日本にも進出しているスウェーデンのIKEAによるインド進出が、数日以内に政府に承認されるようです。商業産業大臣によれば、現在は、産業政策促進局(Depertment of Industrial Policy and Promotion)がIKEAの書類を審査しており、続いて、11月20日の外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board:FIPB)の審査となります。FPBIの後には、さらに、120億ルピーを超える場合にのみ必要とされる経済事項内閣委員会(Cabinet Committee on Economic Affairs)の手続きを経ます。
なぜそもそもこのような手続きが必要になるかですが、インドの外資規制上、外国ブランドの小売事業者がインドに投資については、自由に行うことができないとされているためです。IKEAは、自社のブランドでインド人顧客に家具を売っているため、インドのルール上、単一の海外ブランドで小売をする事業者として、取り扱われています。

さらに、現在、「卸売」事業として事業を行っている複数ブランド事業者も、複数「小売」事業に参入するようです。

やはりインドは、世界中から注目を集めるマーケットといえます。

http://www.hindustantimes.com/Specials/Coverage/US-Elections-2012/Chunk-HT-UI-USElections2012-OtherStories/Obama-2-0-sends-jitters/SP-Article10-956380.aspx

せっかくなので、インドとの関係でオバマ大統領の再選を考えてみた記事です。オバマ大統領は、大統領選挙活動中、業務を他国にアウトソースするアメリカ企業の税額控除を廃止する、と主張してきました。ここでいう、「他国」とは、まさにインドを意味するのであり、改善しない国内失業率も踏まえて、「なぜバッファロー(NY州)からバンガロール(インド南部の都市)に仕事が移されているのか」と聴衆に訴えていたのでした。果たして、これは選挙専用のレトリックなのか、それとも本心なのか。

インドの中では、これを悲観的に見る人、楽観的に見る人、様々なようです。後者の人は、過去5年間でインドのITセクターがアメリカ国内の28万人の雇用を創出した、150億ドルの税も払っている、と主張しています。インドのIT企業から見れば、アメリカはそのサービスの輸出先として、70%を占めます。

英語で、ITが使えて、ちょうど地球の裏側でアメリカの夜の時間帯に仕事をしてくれる、インドという国。アメリカから見ると、もはや必要不可欠の国なのかもしれません。オバマ大統領も、このことは無視できないでしょう。



http://economictimes.indiatimes.com/news/international-business/suzuki-to-file-for-bankruptcy-in-us-to-focus-on-motorcycles/articleshow/17111084.cms

国際ニュース欄にあったので、日本でも普通に報道されているかとは思いますが、やはりスズキのインドへの影響力は絶大なので今日はこの記事を。
1985年以降続けていたアメリカでの新車販売を停止するため、現地の法人について倒産法に基づく手続きを裁判所に申し立てたとのこと。 アジアの自動車メーカーの中でもアメリカマーケットにおけるシェアは最小で、わずか0.2%だったようです(その上は、三菱自動車で、現在は0.7%だったのが、直近では0.0%まで落ち込み)。

当然の経営判断とは思いますが、こういった動きは、ほかの業界にも波及しそうですね。とりあえず、アメリカ、という発想はもはや古く、自社の得意なマーケットにフォーカスすべきと。スズキの場合、上記の数字を見る限り、むしろ遅すぎた感もありますね。。確かに、私もアメリカに行った際の印象として、彼らは体も大きく、大きいものが大好きなので、車も当然SUVが好きで、日本人のコンパクトカーというのは受けないだろうな、と思いました。株式会社である以上、リスクをとって新しいマーケットに挑戦するのは当然ですが、引き際も同じく重要ですね。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/auto/automobiles/maruti-suzukis-manesar-workers-plan-hunger-strike-rally/articleshow/17107581.cms

今年7月のスズキの労働者の暴動は記憶に新しいところですが、新しい動きです。報道によれば、暴動のあと、一部の元従業員が暴動について訴追されていますが、これが恣意的であるとの主張で、 548名の解雇された従業員の復職と、この暴動により投獄されている従業員の釈放を求めています。ただし、今回の方法は平和的で、政府にハンガーストの通知を提出し、手続きにのっとった労働者としての権利要求、という位置づけのようです。ほかの労組もこの労組の動きに協調している様子。

7月の暴動では大きな被害を出したマネサール工場ですが、現時点では、最大1800台/1日の生産台数のところ、1600台まで回復していたところ(すでに短期労働者なしでの操業ができていたようです)での、今回の再度の労働者の抵抗。平和的な手法がとられていることから、かえって長引くことも懸念されます。

一方で、日系企業のインド進出数は1000社を超えたという報道もあります。労務管理は大きな問題点ではあるものの、日系企業のインド進出の流れは、止まりそうもありません。

http://www.hindustantimes.com/News-Feed/BusinessBankingInsurance/Banks-shy-away-from-consumer-goods-loans/Article1-954835.aspx

記事によれば、耐久消費財への銀行へのローン残高は、半年前より20%縮小し、代わりにNon Banking Finance Companies(NBFC)のローンが伸びているようです。上記銀行ローンは無担保で金利が高いため、弁済が滞ってしまう確率も高いようで、銀行もローンを渋りがちのようです。銀行の担当者は、家電の価格の下落がローン残高の縮小と見ているますが、他方、NBFCの耐久消費財へのローンが伸びているため、おそらくは 銀行からNFBCへ、ローンの需要がシフトしている様子。ちなみに、NBFCは、消費者からの金利をゼロとし、家電製造業者から販売にリンクした支払いを受けるという仕組みもできるため、消費者から見ると、魅力的なものと思われます。(その分そのまま、商品の価格に転嫁されていたら意味がないんですが、おそらくプロモーション的な値引きはしているかと)

ちなみに、NBFCのうち、ローンなど一定の類型のみを行うものは政府承認なしで100%外資も参入可能です。聞くところによると、まだあまり同業者も多くないとか。一方、日本ではこういう金融の仕組みって、色々ありますよね。日本企業のチャンスです!!

http://timesofindia.indiatimes.com/city/mumbai/Who-needs-TV-when-there-is-internet/articleshow/17081055.cms

最近、日本人はテレビをあまり見なくなった(その代わり、インターネットに時間を使う)とか、液晶テレビにフォーカスしていた日本の家電業界の業績が軒並み赤字であるとか、テレビ業界には暗い話題が多いですが、インドも同じ傾向があるようです。

記事によれば、インド人も、ツイッターやオンラインニュース、エンターテイメントを利用するため、テレビはもはやいらない、という人々の声が伝えられています。先月末に、デリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタの4大都市は、ケーブルテレビのデジタル化の期限であり、その対応が間に合わなかった人たちも、それほど不便な生活にはなっていない、とのこと。

こちらで暮らしていると、ソニーのテレビは(韓国勢に次いで、)一定の存在感は示していますが、 それ以上に、大半のインド人は携帯電話を持っています。それで事足りるということになると、インドへのテレビ事業の投資も、あまりうまくいかないということになってしまいますかね。.。他方、この前ドバイに旅行に行って帰る際は、大半の出稼ぎインド人が、ソニーの30-40インチのテレビを買って並んでいました。なぜサムソンじゃないのかと聞いたら、日本ブランドのネームバリューは大好きとのこと。ブランド戦略、非常に重要と言えるかもしれません。

http://www.livemint.com/Leisure/DYeT66irqkZpCZEGqyaTGI/Our-laws-need-a-workout.html

今日は時事ネタではないですが、興味深かったのでこちらの記事を。

インドの立法とその執行事情に関する記事ですが、仮に立法だけが文化的な社会を作り出すとしたら、インドは世界からうらやましがれる(それくらい充実している)だろうと。例として、憲法が挙げられていますが、米国憲法は前文で4400ワードだが、 インド憲法は目次だけで5022ワード!本文は、目次を除いて249「ページ」!しかし社会の実体は、イギリス支配の時代や、それ以前の前近代の時代と変わらないだろうと。
それでも立法府は新法を作り続けていて、たとえば、女性の尊厳を傷つける表現を含むスパムやEメールから女性を守ろうという新法が議論されているが、実はそれはすでにある個人情報保護法の規定で十分カバーされていると。(したがって、適正に執行がされれば、新法を作る必要はない)でも、政治家はそれに気づかないと。別の例として、インドは公務員の汚職防止のための立法がたくさんあるが、実際問題は汚職が蔓延していると。政府による改革は、新法を作ることではなく、既存の重複する立法をスリム化することではないかと。

これを見ていると、 いろいろ疑問がわいてきます。
なぜ立法があるのに、執行がうまくいかない?(→違反した場合に機能するはずの司法の機能不全?)
なぜインドの役人にそんなにたくさん立法案を作る能力があるの? (→立法を補助するほうに人を裂きすぎ?)
なんで立法の重複に気づかないの?(→日本以上に縦割り行政で、誰も全容を統一的に把握していない??)

この国で、日本の感覚でコンプライアンス、なんていってもなんだかむなしい気もします。。

http://economictimes.indiatimes.com/markets/regulation/ministry-of-corporate-affairs-plans-rules-to-curb-fraudulent-pyramidal-schemes/articleshow/17055055.cms


どこの国でも、いつの時代でも、人間の欲に漬け込んだこの手の犯罪はなくなることはないのだと思います。The Diguised Money Circulation Scheme Banning Rules, 2012 というルールにより、この種の犯罪をなくすための権力が与えられようとしているのですが、会社法を担当する大臣は、Depositという概念を明確化したり、銀行をだますために会社が会計情報に不正をした場合のルールを設けよう、ということのようです。

目的はわかりますが、そのために会社法のルール(基本的に、会社、株主、債権者、取締役などの会社関係者の法律関係を規定する)をいじる、というのは、日本人的にはちょっと意外な感じですね。

http://www.hindustantimes.com/BusinessSectionPage/Auto/Hyundai-faces-labour-unrest/Article1-953007.aspx

昨日も書きましたヒュンダイのストライキですが、労組側の要求は、2008年に解雇された87名の従業員のうち、再雇用や和解などで解決されていない27名の復職や、正式に認められていないもののCentre of Indian Trade Unionsからの支援を受けている労組の正式な認可、(昨日も書きましたが)3年間の40%近い昇給への反対、などがあるようです。
労組側によれば、2007人のチェンナイ工場の従業員のうち、850人はストに賛同する見込みとのことですが、会社側は上記要求に応じる意向は今のところないとのこと。ちなみに、工場の生産台数は年間60万台、一日あたり2000台とのことで、仮に工場が完全停止になった場合、影響は大きそうです。



 

このページのトップヘ