blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

2012年11月

Indian power equipment makers oppose setting up of Chinese manufacturing units

中国最大の発電機器メーカーが、インド政府に対し、インドでのビジネスをやりやすくするため、各種要求を突きつけてきています。

主要な点は2つ挙げられており、関税とビザです。前者は、国内企業の強い要求から、インドでは、輸入発電機器に21%の関税をかけており、これを下げてほしいと。後者は、プラントに滞在する高度な技術者に対してのみ認めているビザの発給要件を緩和し、もっと簡単に人を派遣できるようにせよと、ということです。その他、国立電力会社が国内産の機器を優先的に購入しているのも、やめてほしいといってきています。 
インド政府としては、どれも国内企業との関係で調整が必要でしょうし、インドとしても逆に中国への輸出にかかる関税を下げろと、いう要求をしているようです。

日本から見ると、中国もインドも二大海外市場、とみなされていますが、インドへの進出については中国も狙っているようで、その意味では、近い将来、中国が欧州・韓国企業に加えて手ごわい競争相手になるのかもしれません。
 
でも、ビザの件は、日本人としても何とかしてほしいですよね。単なる出張の場合、ビジネスビザだと思いますが、これでもいちいちインド側からInvitation letterが必要になりますし、発給自体にも数営業日を要しています。雇用ビザになった日には、本当に大変で、私の場合もなんだかんだで最初の申請から1ヶ月弱を要しました。。。 ビザセンターのホームページに書いてあるとおりに申請したのに、後から後から追加要求が。。悪夢でしたね。

Another inquiry to decide on action against Palghar cops

少しカバーするのが遅れましたが、実は先日のBal Thackeray氏の死去に関して、興味深い事件が起こっていました。
有力政治家、バル・タカレー氏死去。ムンバイの都市機能停止

都市機能が停止したといいましたが、この件について、「何で一人の人が亡くなったことでこんなに大事になるの」という趣旨の批判的なFacebookの書き込みをした女性と、それについて「いいね」を押した女性が、なんと逮捕されていたのです(確かもとの投稿自体、すぐに本人が言いすぎたことを認めていたかと思います)。Information Technology Actという法律が2008年に改正された際、"sending offensive messages through communication service"が犯罪とされたのですが、これを適用したとのこと。
これに対し、それはやりすぎだろうと各方面で批判が集中し、結局女性2人はすぐに釈放されました。ただ、事態はこれでは止まらず、 担当の捜査官は"unjustified"なことをしてしまったというレポートを提出しました(させられました?)。人権侵害の犯罪行為だという主張が続き、捜査官を刑事訴追だという声もあります。

この件については批判を受けて、政府当局もガイドラインや命令を出すべきだとされていますが、まずは法令解釈についての意見書を求めるようです。

ただ、"sending offensive messages through communication service"という法律の規定は、ガイドライン等で明確化する以前の問題として、そもそも非常にあいまいな気がします。本件で批判が上がるのはもっともなのですが、2008年の改正時にどのような議論がされたのでしょうかね。このような広い規制を必要とする社会的な背景がなにかあったのでしょうか。

Sebi talks tough on public holding rule; says June'13 deadline will not be relaxed

 インドの上場企業には、広く上場株式が一般に取引されているという通常のイメージとはかけ離れ、Promoter(日本でいう創業家株主のイメージ)が大多数を保有している会社が、結構あるようです。

SEBIという証券当局が2010年6月、これではいかん、ということで、3年以内に上場契約規則を改め、上場会社はすべからく、一般投資家持分を最低25%まで引き上げる改正をしました。(その後、国営企業だけは10%まででよい、という修正がすぐにされましたが。 )というわけで、一般企業の期限は来年6月、国営企業は同年8月が期限とされました。ところが、2012年6月時点の調査でも、この基準を満たしていない会社は216社もあるそうです。(記事に出ている例だと、Wipro、Jet Airways、 DLF、Essar Shipping、Jaypee Infra、L&T Fin、Indian Bank、State Bank of Mysoreがあります。)
今年4月の時点で、「1年半以上たっても積極的な措置がとられていないのはけしからん」とSEBIの議長は発言したのですが、とはいえそこはインド人。上場会社側は、どうせこのルールは守られないだろう、という目論見だったとか。
ところが今回、SEBI側はさらに強硬な姿勢をとり、「この期限は延期しません。守らない場合、創業家持分を減らす以外には証券市場を利用させないよ。場合によっては、強制的な上場廃止や、更なる法的措置(訴追手続き)なんかもやっちゃうかもよ。」とのメッセージが明らかにされました。

 そもそも上場企業というのは、一定の厳しいルールに沿わせることで、上場企業側に幅広く投資家から資金調達する機会を認めるものですから、9割以上をひとつのグループがコントロールしているというのは当然、望ましい自体ではありません。このあたりは、まだまだインドの証券市場は発展途上ということでしょうか。
これを契機に、多くの上場会社株式が市場に流通し、市場が活性化するといいのですよね。

Govt to launch direct cash subsidy transfer from Jan 1

富裕層はものすごく増えてはいるのですが、やはり国全体で見ると、まだまだ貧しい国インド。とはいえ、この民主主義国には10億人以上の人口があるわけで、選挙対策となるとお金がかかるのですが、与党が非常にわかりやすい一手を打つようです。

政府が定めるBelow the poverty line(BPL)の人たちに対しては、現在、補助金により食料、肥料、燃料が交付されていますが、その代わりに、来年1月から、各銀行口座に直接送金します、ということです。年額3-4万ルピー(4.5-6万円)、全体では、4兆ルピー(6兆円)というから、すごい話です。インドには、Aadhar cardという補助金、年金、奨学金を受け取るためのカードがあるのですが、 これを持つ家族に直接送金する仕組みだそうです。とはいえ、Aadharの普及自体、地域により差があるようなので、普及率が高い地域からスタートするようですが、来年中に、インド全体をカバーする意向とか。

どこの国でも、似たような政策が考えられるものだなと思いますが、食料や燃料に困っているレベルということは、BPLの多数は農村暮らしと思われます。これを受けて、機械や車などが急に売れるとも考えにくいので、日本企業のビジネスの直接の起爆剤となるかというとちょっと難しそうな気もします。
ただ、田舎にATMの需要が一気に増えるのだと思いますので、そこはわかりやすいチャンスですよね。それとくっつけて、何かモノやサービスが提供できるビジネスというのがあれば、それはありだと思います。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/services/retail/fipb-denies-ikea-to-sell-half-its-products-in-india/articleshow/17329362.cms

先日、以下の記事を書きましたが、実はいろいろ条件がついていたようです。
IKEA、まもなくインド市場へ進出。複数小売事業者も続く
IKEA、小売としては過去最大、19億ドルの規模でインド進出

申請書に書いていた29の製品のうち、実際に許可されたのは、実は15だけ。Home-Office use product(文房具など)、消費者向けのパソコンなどの家電、布製品、おもちゃ、革製品、掃除用品、ビーチ用品、旅行用品に化粧品などは、全部NG。お店の中に自前のカフェを持つのも駄目とか。
IKEAとしては、自社で100%子会社を持って自社ブランドで海外と同じ展開をしようともくろんでいただけに、何で??という感じでしょう。この件に関しまだIKEAも法律事務所もノーコメントのようですが、果たしてこのまま進出と行くでしょうか。

果たしていかなる法的根拠に基づいてこのような拒絶がされたのか、現時点では判然としません。ありうる考え方として、そもそも「シングルブランド小売」「複数ブランド小売」といっていますが、実際には定義規定はないので、IKEAのビジネスのうち、一部は前者の範疇からはみ出ている、とみなされたのでしょうか。OKとされた14の製品も明らかではないのですが、インドの役所の判断として、ひとつのブランドで特定の種類の製品を消費者に売るのが「シングルブランド小売」であり、ここでいう「特定の種類の製品」とは、IKEAの場合、家具「だけ」だと、いうことでしょうか。

いずれにせよ、IKEAとしてはどうしますかね。IKEAの交渉力があれば政府に対し正面から「何でこれがいけないの?駄目ならインドに進出しないよ」と交渉できそうな気もしますが、他方、IKEAがすでに相当前からインド市場を狙っていたことからすれば、その結果がこれ(要は、むしろ14件の家具類を何とかOKさせることができた)なのかもしれません。まだ不勉強なのですが、このような政府のFDI(外国直接投資)の決定に対して不満がある場合、司法手続きに訴えることができるんでしょうか。

また、ここでNGとされた商品については、IKEAが他国と同じラインアップでビジネスしたいと思う場合、他の企業がIKEAと組むチャンスなのかもしれません。



http://www.hindustantimes.com/India-news/Mumbai/26-11-villain-Ajmal-Kasab-hanged-Pak-stops-journalists-from-entering-his-village/Article1-962152.aspx

ビジネスとは直接関係ないですが、今日はこの話題を。2008年11月26日、ムンバイのタージマハルホテルを10名のパキスタン人のテロリストが襲撃し、計166名が死亡するという悲劇がありました。その犯人で、唯一生きたまま逮捕された犯人、Ajmal Kasab氏(25歳)が水曜の午前、ムンバイ郊外のプネというところで絞首刑に処せられました。この悲劇の4周年が迫ったこの時期の死刑執行は大きな注目を集めており、一面記事で大きく扱われています。混乱を避けるためか、かなり秘密裏に行われたようで、これが人々の驚きにもつながっているようです。

そもそも世界的に見ると、死刑制度が存続し、且つ実際に実施している国はそんなに多くはないと思うのですが、インドはその中に含まれていたんですね。ただ、最近の執行としては2004年のコルカタでの執行が最後で、ムンバイのあるマハラシュトラ州でいうと1995年が最後とのことだったので、ちょくちょくニュースで死刑執行の報道が流れる日本と比べると、インドではかなりまれなケースということができそうです。インドにおける外国人の死刑執行としては初のケース、そして、時間がかかることで有名なインドの裁判所ですが、この事件から4年で死刑執行というスピードは、過去2番目に早いそうです。

このテロは、アメリカ同時多発テロの911のように、26/11と日付で表記され、特にムンバイにいるインド人の心には深く記憶が残っていると思われます。記事には、処刑に使ったロープの長さや何キロまで耐えられるか、誰が作ったという情報や、彼を処刑まで生かしておくコストが170万ルピーぐらいかかったとかの情報もありますが、このあたりからもなんとなく、インド人のこの事件に対する感情が垣間見えます。
ちなみに、私の運転手は、このテロの際、ホテルの駐車場にいて、警察とテロリストが戦っている間、同じく現場に居合わせてしまったほかの運転手と一緒に、地下のトイレに避難していたそうです。事件の後は、本当にあたり一面血の海だったとか。彼は本当にいい人で、この事件で犠牲にならなくてよかったと思います。


http://economictimes.indiatimes.com/news/economy/policy/ikeas-rs-10500-cr-retail-proposal-gets-fipb-nod/articleshow/17295463.cms

先日も書きましたが、ついにインドにIKEAが進出することになります。外国投資に必要な政府の承認が火曜に行われたとのことです。実際には、120億ルピー以上の投資には内閣の経済事項委員会の承認も必要になりますが、政府は外資呼び込みのスタンスととることから、形式的なものにとどまりそう、との報道です。8億ドル弱と10年かけて10店舗を設置し、さらにその後は15店舗をオープンする計画ですが、そもそもインド国内にサプライチェーンと整えるのに3年を見込んでいるそうで、明日から直ちにIKEAの商品が買える、というわけには行かないようです。

今年9月にシングルブランドの小売業の規制も緩和され、100%投資に必要とされていたものの、不合理だと批判とされていた要件が緩和されました。今年4月から8月にかけての外国投資は前年比60%と落ち込んでいるようで、今後も外資の流入を期待しています。

とはいえ、一方で不穏な動きも。 野党のインド人民党などが属する国民民主同盟は、IKEAや昨日のWalmartまど、小売業への外国投資に反対する決議を国会できるようにするなどの方法で、反対する計画を立てているとか。こちらはおそらく、国内の零細な小売業者を保護する立場によるものと思われます。(巨大な外資がインド市場に進出すると、彼らが一気に職を失うため)

以前も書きましたが、インド市場の外資開放自体は、長期的には当然の動きだと思いますので、後はタイミングの問題だけかと。急速な開放は短期的にはインド国内に多少の混乱は生みそうですが、とはいえ、結果的にもたらされる外国の商品・サービスの魅力からしたら、インド人にも歓迎してもらえるはずです。

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http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/services/retail/anti-bribery-investigations-wont-tolerate-any-violation-says-walmart/articleshow/17286691.cms

先日の報道(ウォルマートがインドで米国外国公務員贈賄法違反か)に続き、Walmartのインド現地法人も、本件に関して記者の問い合わせに答えています。もちろん、法律に形式的に沿うだけでなく、人の誠実さに関するより高度な水準を満たすように活動すると。他方、他の関係者は懐疑的です。以下の声が、インドの現実なのだと思います。

 「みな、Speed moneyを払っている。それをSpeed moneyと呼ぶか賄賂と呼ぶかは別にして、いずれにせよ同じものだ」
「賄賂を払わなければ、忍耐づよく、大声を上げ、かつより高い権威に頼る必要がある」 
「多くの会社はライセンスを扱うエージェントを使っていて、このエージェントは彼らのしたいことを何でもすることができる」 

別の記事では、小売業をスタートするには、31の当局から51のライセンスの発給を受ける必要があるとか。。このたびにお金をよこせと公務員に要求されるとなると、本当にやってられませんね。 世界銀行によるビジネスの容易さのランキングでも、なんと185か国中132位とか。

 他方、米国の外国公務員防止規制違反を問われた場面への対策という意味もあるのでしょうが、Walmartはすでに国際的な会計事務所であるKPMGを使って、従業員の教育をしたり、Venderの法令順守について証明させたりもしているようです。日本企業もこのあたりの意識を高めておく必要があります。

http://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/GAAR-amendments-finalized-Chidambaram/articleshow/17274368.cms

財務相のChidambaram氏によれば、課税逃れを目的とする行為を事後的に税務当局が否認し課税することができる租税回避行為否認規定(GAAR: General Anti Avoidance Rule)を含む所得税法の修正案が間もなく完成し、首相と内閣の承認手続きに入るようです。

近年、非常にアグレッシブな態度をとって、裁判覚悟の?課税措置を取っているインドの税務当局がこのような広範な権限を持つことについては、国内外の投資家から反対の声が上がっていました。当初、この規定は遡及効を持つ(立法前の取引にもさかのぼって適用される)という見解を政府が表明したこともあり議論が紛糾し、Shome氏という税務の専門家をトップにする委員会からは、9月にGAARの施行を3年間延期するべきだと表明されています。果たして最終的にどのような結論となるのか、注目が集まっています。

政府も、様々な汚職疑惑の影響やVodafone事件の影響で外国投資家がインド投資に及び腰になっていることは十分承知しているところだと思いますので、ここは、現実的な落としどころを期待したいところですね。

http://timesofindia.indiatimes.com/bal-thackeray/specialcoverage/17220149.cms

本日はどの新聞もこの記事が大半を占めています。Shiv Senaというヒンドゥー至上主義をとる政党の設立者で、ムンバイの市政を実質的にコントロールしていたBal Thackeray氏が昨日午後3時半、死去したとのことです。Wikipedeaの情報では、Shiv Senaは、特にマラティー語を話す人々を優遇しており、その他の民族については移民を含め、排斥する動きをとっていたとのこと。本日は、何千人もの警官が警護する彼の自宅を拠点に葬儀が行われ、ムンバイの都市機能が丸一日、ストップするようです。

先日も日本領事館より、彼の危篤報道を受けた注意喚起がなされていました。金曜には、彼の息子が容態は持ち直したとの声明を発表し、土曜の午前は町は普通に戻ったようにも見えたのですが、どうやらこの声明も単に町の落ち着きを取り戻すためだけのものだったのかもしれません。

いずれにせよ、Shiv Senaによる暴力的な行動が懸念されるようですので、しばらくは自宅待機ということになりそうです。

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