blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

2012年10月

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/auto/automobiles/labour-troubles-back-to-haunt-hyundais-india-operations/articleshow/17023737.cms

 
この夏、スズキの工場での労働者の暴動が大きな話題になりましたが、韓国のヒュンダイ自動車でも、労働者ストが起きたとの報道です。ヒュンダイはそもそも先日、スズキに続いて、労働者の賃金の大幅アップをリリースしたところであり、このような労働者の取扱いには先行的にケアしていたように思われたのですが、どうやら上記賃金アップには含まれていない事業分野があったようで、それが今回の原因ではないかとこと。ストの背景には、左翼的な労働組合団体があるようです。

 一般論として、労働問題を起こさないようにするために、労働者との話し合いが重要とされていますが、とはいえ、経営者側はすべての労働者を同じ条件で扱うわけにもいかないので、ある人たちのためにプラスになることをしたら、それが別の人たちにとってはマイナス、ということになることはやむを得ません。いずれにせよ、日系企業の方の関心の高い分野だと思いますので、引き続き情報を追いたいと思います。

http://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/Nissan-dealers-refuse-to-take-vehicles/articleshow/17014454.cms

外出の移動中など、スズキ、トヨタ、ホンダに加え、ちらほらですが日産車も走っているなという印象を持っていたのですが、その日産が販売代理店との間でトラブルを抱えているそうです。代理店側が車両の仕入れを一時停止し、日産のマスターフランチャイジーである、Hover Automotive India (HAI)とは別に、代理店が独自に組織を作って、日産側との競技が行われる予定とのこと。どうやら背景にはSales Taxの扱いや国内販売より海外輸出に力を入れる日産との方針のずれなどがあるようです。

記事にも詳細はありませんが、どうやらHAIが両者の間を取り持つ機能を果たしていないようです。インドでの販売網を築く方法として、インド既存のサプライチェーンを利用することは合理的かと思いますが、パートナーとして適切な相手か、双方がWin Winの形にできるか、という点をよく詰めておく必要がありそうです。

 
シン首相が内閣改造をしたということで、どの新聞も一面で扱っています。
 
見出し文を見る限り、内閣の若返りを図ったように見えますが、平均年齢で言えば、新内閣が65歳1ヶ月(改造前が65歳8ヶ月)、とのことでちょっと?という感じです。ただ、個別に新任者を見ると、Corporate Affairsの大臣が35歳、Defence and human resource developmentの大臣が39歳、その他40代前半の人もちらほらと、確かに若い人も含まれているようです。2014年の総選挙に向けた体制作りということなので、今後の政策に期待したいと思います。

http://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/After-stamp-duty-fee-VAT-cannot-be-levied-argue-builder-lobbies/articleshow/16985794.cms

VAT(付加価値税)についての訴訟経過に関するニュースです。VATとはインドにおける州により課税される間接税で、物品によって税率はまちまちですが、12.5%というものが多いようです。当局がディベロッパーに対し、販売したFlat(マンション)についてのVATの支払いを請求しているのに対し、ディベロッパーがいくつかの反論をしています。

不勉強なのでディベロッパー側の議論の詳細が理解しきれていませんが、VAT自体は2005年に導入された比較的新しいもので、物品の販売のみに課されるもの、とのことですが、新聞記事では、これが2006年に改正され、ディベロッパーによるImmobable propertyの販売も課税対象としたことで、今回の紛争が起きているようです。今回の判決次第で、2006年から2010年に建設中の物件を買った全ての人たちも課税対象になりうるようで、インパクトの大きい話と言えます。

http://www.hindustantimes.com/business-news/WorldEconomy/Retail-Reloaded-the-big-pic/Article1-950631.aspx

先月、インドの外資規制が緩和され、複数ブランド小売(スーパーやコンビニ) 業界への外資規制が、非常に厳しい要件ながら解禁されました。その結果、農家、卸売業者、小規模農家、輸入業者、バックエンド(倉庫業者)、フロントエンド、キラナ(インドに多数存在する個人レベルの小売業者)、そして消費者にどのような影響が出るかを簡単にまとめたのが今日の記事です。基本的には、インドの小売業界は小規模で非常に多くの仲介者がおり、非効率なので、これが合理化されれば、消費者は低価格で買い物ができるようになり、仲介者たちは職を失うリスクがある、ということかと思います。

 国際化社会のスピードからすれば、インドの外資開放の動きは当然の流れであって、国内の各当事者が影響を受けるのもやむなし、ということかと思いますが、短期的には不利益を受ける人も多数存在するわけで、政治的な影響も今後懸念されることと思います。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/healthcare/biotech/pharmaceuticals/overcharging-set-to-cost-pharma-companies-full-sales-revenue-of-drug/articleshow/16959641.cms

インドでは、薬品の販売については一定の公式に沿った価格が設定され、それが当局(National Pharmaceutical Pricing Authority: NPPA)に承認されなければなりません。これを怠って高い価格で製薬販売をしていた場合の制裁として、その薬の販売開始から当局からの価格に関する命令を受けるまでの間の、全売上げが承認のない販売であるとして、没収する、ということになるようです。(州政府も訴訟を提起する権限を持つようです)

とはいえ、違反に対する上乗せの罰金や、過剰価格分の利息などについてのルールはなく、またインドではそもそも訴訟に時間がかかることが指摘されており、これでは不十分という声も。

この批判は確かに、という気がします。インドでは、日々新たな規制を設けている気がしますが、誰がその規制を執行するのか(行政)、従わなかった場合に国家権力で強制できるか(司法)という部分は、正直あまり当てにならないのでは、、という懸念です。12億の超大国を動かす以上、まとまった数の優秀な人材が必要なのでは、と思うのですが、そういう人たちは公務員にはならないのでしょうか。

http://economictimes.indiatimes.com/news/economy/finance/banks-plan-to-drag-finance-companies-of-car-makers-to-cci/articleshow/16945204.cms

インドでは最近、トヨタを含む外国の高級車メーカーを中心に、各自動車メーカーが購入者向けの自動車ローンを付けられるノンバンクのエンティティ(Non Banking Finance Company:NBFC)を自前で用意し、セット販売しているようです。これに対し、このような取り扱いが一般の金融機関がローンを提供する機会をを排除しているとして、日本でいうところの公正取引委員会に提訴することを検討中、という報道です。自動車会社の提供するローンは、市中の一般のローンの金利10-12%(日本の感覚からするとものすごい金利ですね。。。)より2%ほど安く、これ自体をみるとユーザーにもメリットがあるのですが、金融機関サイドは、消費者の選択の機会が失われている、との主張を考えているようです。

話はややそれますが、インドでは、日本では一般的なローンやリース、クレジットやプリペイドカードなど、様々な金融の仕組みが未発達で、比較的原始的な形で取引が行われているとされています。日本の金融関係の各社にとっては、チャンスといえそうです。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/cons-products/durables/samsung-accuses-whirlpool-of-copying-product-design/articleshow/16935292.cms

知財の法廷闘争というと、AppleとSamsungが世界中で訴訟で争っていますが、ここインドでは、SamsungがWhirlpoolに対し、洗濯機、エアコン、冷蔵庫のデザインを模倣したとして、訴訟を提起したとのこと。

インドの冷蔵庫シェア3位のWhirlpoolは今年8月、インド企業Videoconに対する洗濯機の模倣に関する訴訟に勝ったところだったようですが、今度はシェア2位のSamsungからの知財訴訟の提起、ということで、このあたりの争いは激しいですね。ちなみに、冷蔵庫シェア1位は、同じく韓国のLGとのこと。日本の家電メーカーにも閑雅ってほしいところです。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/jobs/Slowdown-shrinks-job-market-by-20-per-cent-but-reforms-hold-hope/articleshow/16920406.cms

 インド景気が鈍化しており、国内の雇用状況は悪化しているそうです。9月以降、景気浮上のための各種新政策が打ち出されてますが、それらが実行されるまでには少し時間がかかるため(6ヶ月-1年)、しばらくこのの傾向が続きそうとのこと。

採用をする立場からすると、選択肢が増えるということで歓迎すべきかもしれませんが、依然、日本企業のスタンダードで満足できる雇用の確保というのは、インドでは一般的に難しいのではないかと思われます。

http://economictimes.indiatimes.com/news/news-by-industry/auto/automobiles/supreme-courts-excise-duty-ruling-throws-automobile-makers-off-gear/articleshow/16909509.cms

先月のFiatらに対する最高裁判決が明らかになり、その中で、間接税を扱う税務当局は、仮に販売価格が費用価格を下回っていても、費用価格を基準に課税をすることが許される、とされたそうです。(その結果、損失を生む販売価格は、間接税を課すことができる"normal price"ではないとされ、1996年から2001年の取引について、追加の税金を払ったようです)

通常は、企業は当然コストに利益を上乗せして販売するわけですが、記事によれば、特定のシーズンや、在庫がたまってしまった場合、原材料価格が為替の関係で突然変化した場合など、費用価格を下回る販売を行う場合もありうるとのこと。様々な業界に影響が波及しうるようで、自動車業界でも緊急対策会議が開かれたそうです。

本件の動向を今後も追いたいと思います。

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