blogでインドビジネスニュース速報-弁護士が見たインドの今

日本人弁護士が気になった、新聞報道に基づくインドの最新の動きをお届けします。

GAAR: European Union wants member states to adopt common general anti-avoidance rules

一般な租税回避行為の否認規定(General Anti-Avoidance Rules:GAAR)というのは、租税回避を唯一の目的として行われたどんな行為についても、租税城の恩恵を認めないものとするルールですが、これについては先日も触れたところです。

租税回避行為否認規定(GAAR)の取扱いが間もなく明らかに

国内・海外の批判に配慮して、既に1年遅らせた施行時期を2016-17年までさらに遅らせるべきだという委員会の提言がありましたが、これを逆に強化すべきだろ言う声が、なんとEUからきているという報道です。どうやら、EU全体で1兆ユーロが毎年租税回避行為により徴収できていないとか。こうなってくると、公平な税の徴収という税制度の根幹を揺るがすような話になってくるので、EUも各国に国内体制の整備を求めているようです。

インドはEUのメンバーではないですから、直接的にはEUからのコメントにしたがう根拠はないように思うので、あくまで政治的な話なのかもしれません。ただ、Taxについては、新たに進出する日系企業のスキームにも、既に進出済みの日系企業にもクリティカルに影響する話なので、今後も動向を注視する必要があります。



Govt plans to set FDI cap on insurance cos at 26%, FIIs may be allowed to pick up 23%

冬の国会が始まって、気になる法案に関する動きが続いていますが、今日は、金融関係の外資規制です。

保険会社外資規制 上限を26%から49%へ

以前、保険会社の外資規制が現状の26%から49%まで上限が引き上げられる見込みだと上記で書きましたが、どうやら、この部分は与党が譲歩するようです。
銀行法、年金関連法案、マイクロファイナンスの法案など、金融関係の重要法案を通したい与党の妥協案として、保険法については、外資の保険会社が持てる割合は現状維持(26%)、ただ、保険会社ではない他の外国投資家が23%までは追加で保有してもいいよ(その結果、外資の合計は最大49%)、という形になる見込みとか。外資に49%までの支配を取られるのは嫌だが、何とかして外国資本に頼らないと国内保険会社的には厳しいというところが背景にあるようです。

なお、金融関係法案の全体的な方針としては、銀行法やマイクロファイナンス系では、RBI(インドの中央銀行)の監督権限を強めて利用者保護を図りつつ、保険や年金では、国内の会社の資本不足を外資に支えてもらう、というものです。


Retail FDI: India plans to amend its antiquated labour laws

小売市場の開放に向けた動きが加速しています。現在もFDIに関する事項が国会で議論されていますが、実際に小売事業をインドで進めるには、関連する規制も一気に緩和・修正する必要があります。たとえばあげてみると以下の感じです。

・24時間365日営業を可能にするための労働関連規制の修正
・過剰なライセンス制度の簡素化と小売事業者のためのライセンス関連窓口の一本化
・インドのもともとの小規模小売業者を排斥しないような規制の手当て
・農地転用を防ぐための土地使用政策のセーフガードの新設
・十分な商業地区を確保するための都市計画の改善
・インド全土を統一する物品サービス税(Good and Serivice Tax)の施行 

3つ目、4つ目は緩和とは逆方向の動きですが、現在のルール上は、ひとつの都市辺りに開業できる小売店数の上限がないことや、 店舗の規模の特定もないことから、外資参入に反対する勢力としては、非常に気になるポイントのようです。

もうひとつ、留意すべき点として、ここ数年、法令改正は続いてはいるものの、インドの法律はまだまだ時代遅れのものが多く、19世紀までさかのぼってしまうものも残っています。これの現代化が必要なのですが、他方、たとえば多くの労働関係法規やライセンス関係のルールは、州レベルのもので、中央政府が「えいやっ」で簡単に変更できるものではない、というところもポイントです。
こうなってくると、FDIの開放という動きがインドの連邦制という仕組み自体、だんだん変えてしまうのではないかという気さえします。翻って、日本を見ると、今は中央政府が権限を持ちすぎて「道州制」を導入すべきという議論ですよね。社会・経済の成長具合、それぞれの歴史が全く違うから当然なんでしょうが、おもしろい動きに思えます。

Cabinet to take a call on National Investment Board proposal today

インドの憲法では、5年後とに5カ年計画を作成する必要がありますが、直近の計画では、意思決定が遅延する最悪のケースのシナリオでは、2012年から2017年の経済成長が平均5%に落ち込むとか。今年の夏以降、経済活性化のため矢継ぎ早に新たな政策が打ち出されていますが、これもその一種かと思います。


記事によれば、内閣秘書局の直轄で首相をトップとする国家投資委員会(
National Investment BoardNIB)を新設することを検討しているそうです。政府の意思決定手続きにおいてプロジェクトごとに一定の期限をあらかじめ定めておき、重要な意思決定を遅滞させないようにしつつ、さらに各プロジェクトが予定通りに執行されているか、モニタリングすることも予定しています。

 

財務省自身、政府のプロジェクト決定にはあまりに多くの意思決定手続きが必要であり、合理的時間内にプロジェクトを開始することが難しいという点に現状の問題があることは把握しているようです。このような仕組みは、日本、インドネシア、マレーシア、タイなどにも存在するとか。

 

興味深いことに、先日耳にしたところでは、外国投資家は、総じて、このような政府の経済を加速させる政策に素直に好意的な動きをする一方、インド人投資家は逆に悲観的で、それが投資行動にも現れているそうです。外から見れば、確かにこのような動きは素朴に歓迎すべきように思うのですが、インド人的には意外に慎重で、実際に数字に現れてくるまでは、簡単には買いには動かないよ、ということでしょうか。

Pilot to pitch for tax relief on CSR spend

インド会社法は、元は1956年に作られたもので、ずいぶん時代遅れになっているということで改正案が現在国会にかかっていますが、今日の記事は、その中でも新しい制度を取り上げています。

企業の社会的責任(CSR) はもはや日本企業の半ば「常識」として理解されているのではないかと思いますが、インドでは、なんとCSRへの費用支出を促すため、一定規模以上の会社のうち、直近3事業年度の純利益の平均値の2%以上をCSRに関する費用に当てた場合、税務上の優遇を与える、とのこと。CSR費用の支出自体は義務ではないのですが、もしこれをしない場合には、その理由を報告しなければならず、これを怠った場合には、刑事罰を与えます、という仕組みにするそうです。
(ちなみに、委員会での議論時点では、CSRの支出自体を義務にする方向の議論だったようですが、大臣はそれはいけないね、ということで、もう少し自発的な仕組みに改めたようです。)

規模基準を満たす会社は、今のところ11000社から13000社ということで、それほど多くはないのですが、すぐに思う疑問は、何がCSRに関する費用で何が該当しないのか、って誰が判断するの?というところ。いましている費用の中でも、なんだか説明をこねくり回せば、当社のCSRはこうやって果たすんだ!といえてしまいそうな気もします。不当な場合は、上記の理由に虚偽があったとかいって、会社法上の責任を問えるようになるんでしょうかね。

ちなみに、会社法改正案では、会社の不正を防止するための開示義務の強化や、アメリカ的なクラスアクションの導入など、今までのインドの会社の仕組みにかなりのインパクトを与えかねない改正が多く含まれています。

Foreign Investment Promotion Board to vet pharma M&As involving FDI

ここ数ヶ月、規制緩和で経済活性化、ということで外資規制を緩めていますが、どうやら分野によっては逆の動きも起きています。

製薬業界への外資規制は現在のところ存在せず、100%まで外国企業が投資できるのですが、この結果、ここ数年でインド国内のいくつかの大規模製薬会社が買収されました(たとえば、2008年の第一三共によるRanbaxyの買収など)。その結果、インド国内で流通していた安価な薬の価格が上がってしまい、薬を必要としている貧しい人たちが入手できなくなってしまいました。インド人の健康維持の観点から、これではまずい、という議論が進んでいます。

今のところ、このような外資を管理する方法として、外国直接投資(FDI)の上限を現在の100%から49%に引き下げること(これにより政府がどのような外資企業が入ってきたか、情報を把握できるようになる)、それとともに、日本で言うところの独占禁止法を改正して薬の価格の引き上げを制限することを検討しているようです。ただ、このような特定の業界だけを狙った競争法の改正が可能なのか、今は検討中とのこと。

このようなFDIの上限を下げる動きというのは、インドでは、各業界を通じて初めてです。インド人に聞いたところ、この議論自体、ここ2年位続いているそうですが、安価な薬を国民が入手できるという目的はもっともなものだと思いますので、おそらくこの規制自体は実現されるのではないかと思います。
業種によるのだと思いますが、このように、経済成長とは別の観点から、規制開放の流れとは逆行する動きもありうるという点は、特に関連する業界の方は留意しておくべきといえます。

Vodafone case fear: Settlement with telco may invite charges of undue concessions, large demands of refund

以下でもほんの少しだけ触れましたが、Vodafone事件についての解決を図るのは、なかなか難しいという記事です。
租税回避行為否認規定(GAAR)の取扱いが間もなく明らかに

そもそもどんな事件だったかですが、オランダのVodafoneが、2007年、インドの通信事業者Huthisonを買収した際、同社の株式を保有するケイマンやモーリシャスなどの持株会社の株式を取得する、という間接的な買収方法をとったのですが、これに対して、インド税務当局が課税漏れを理由に2000億ルピーの課税処分をしたことから問題になりました。このような間接買収スキームを使った節税スキームは一般的に使われていたため、海外投資家はびっくりしました。

これは裁判闘争となり、高裁では税務当局が勝訴したのですが、最終的に最高裁ではVodafone側の主張が認められました。ただ、これで終わらないのがインド。なんと政府は税法を遡及的に変更し、過去の間接取引についても課税できることを定めるルールを定めました。当然、外国投資家はさらにびっくりして、インド投資を引き上げました。 これではまずいと、Shome氏をトップとする特別委員会が、このような遡及的なルールの変更はいけない、仮にそうだないとしても、利息と違約罰は含めるべきではないとしましたという意見を出しています(この場合、Vodafoneの納税額は800億ルピーですみます)。

税務当局は今のところShome氏の意見には賛同しかねるとの立場ですが、いずれにせよ、Vodafone事件の処理をどうするかは非常に微妙な問題のようです。Vodafoneとの和解は今後の不正につながるのではないか、したがって軽い処分にはできないが他方で外国投資家からを遠ざけてしまいたくない、また、同種取引ですでに納税をしている人からの返金訴訟が起きるのではないか、というあたり。どれも難しい問題です。

聞くところでは、Vodafone事件以降、インドにおいて、類似のスキームが全くとられなくなったわけではない、とのこと。この場合、政府が最終的には外国投資家よりの判断をするはずだ、という見込みで進めているのかもしれませんが、インパクトの大きな話だけに、早く解決を図ってほしいところです。

ipaidabribe.com: A website allows Indians to post their bribe experiences

インドの腐敗の問題は、先日Walmartの報道についても書きましたが、今回は、これをいかに防ぐか、という一つのチャレンジについてです。

I Paid a Bribe

こちらのサイトでは、公務員の汚職によりこんな被害を受けた、という内容を匿名で一般の人がアップできるようになっています。一昔前に有名になたWikiLeaksに少し似ているかもしれません。バンガロールにあるNGOが開設したサイトで、贈収賄に関する情報を共有することにより、少しでも汚職を減らしていこうということを目的にしています。今のところ、500の都市から、20000件を超える報告がされており、インド以外の外国も興味を示しているそうです。

実際に、このサイトの情報を使ってバンガロールの輸送委員会がその手続きを改善し、ライセンス申請手続きをオンライン化するなど、自動化を進めて間に入る人の手を減らすことで、汚職を減らそうとしているそうです。この観点は非常に重要で、結局のところ、人の手が間に入る機会が増えれば増えるほど、特に下級の公務員からの贈賄要求のリスクが高まると思われますので、その意味で、インド得意のITを駆使して、どんどん手続きのオンライン化を進めてもらいたいところです。(インド国内のIT需要がますます高まる効果も期待できますよね。) 

記事によると、やはり行政と警察の汚職が数値的には一番ひどいようです。
汚職の背景としては、インドでは、実は表現の自由があまり尊重されていないこと(オンラインの世界でいえば、先日のFBの投稿と「いいね」に対する行き過ぎた逮捕、批判相次ぐもご参照)、民主主義のための制度(警察、司法など)が実はその助けが一番必要な貧困層にある大多数の国民には行き届いていないことなどが考えられるそうです。

Non-compete fees can be treated as deductible expense: Tribunal

 「創業家株主の非競業に関する報酬」って何のこと?という感じかと思いますので、順を追って説明します。

インド法にはPromoterという概念があり、おおむね日本の創業家株主(会社を作った社長さん)と理解していただければいいのですが、このPromoterのAさんが第三者Bさんに会社X社の株式を売却する場面を考えてください。通常、日本の実務だとこういう場合、Aさんに対して数年間の競業避止義務を課して、取引後、しばらくはX社と同じビジネスを、ほかの会社を新しく作ったり、他の人と組んだりして、やらないでね、というアレンジをします。こうしないと、Bとしては、X社を買ってそのノウハウを使って利益を上げようと思っていた買収の目的が、実現できなくなってしまうためです。

ただ、インドでは、契約終了後の競業避止義務は、ビジネスを不当に制限するものとして、基本的に認められていません(日本でもあまり長い競業避止義務は同じ理由で認められないと考えられています)。これだと、Bさんが困ってしまうのですが、あくまで認められないのは、契約「終了後」の競業避止義務であり、何らかの契約さえ存在していればその契約「期間中」は競業避止義務を課すことができるので、ここで、一つの工夫をします。 株の売買に伴って、BさんがAさんに一定の報酬を払って、「特定のビジネスをしない」という契約を結ぶのです。これにより、Bさんの目的が達成されます。(なお、これだとBさんが余計に経済的に負担しないといけないように見えますが、その分、株式の売買代金を安くするなどすれば、トータルの金額は同じです)

で、この支払いを、Non-compete fee(無理矢理日本語にしたのが、「創業家株主の非競業に関する報酬」)と呼ぶのですが、従前の判例では、これを税務上、設備投資の仲間として整理していました。この点が今回の判例では異なる結論になり、そうではなくて費用計上していいよ、ということになりました。すなわち、その分Bさん側の課税対象になる所得が減るので、タックスメリットがあることになります。

記事によると、過去設備投資と扱っていた事案と比較すると、競業避止の合意が買収の中核をなしていなかったこと、より具体的にいうと、この競業避止の合意が株式譲渡をクロージングするための前提条件になっていなかったこと、また、報酬の額がRBI(インドの中央銀行)の承認を受けた公正な価額であったことなどが、判断を分けたとのこと。

これは正確に理解するにはもう少し勉強が必要そうです。ややマニアックなな話ですが、実務的な影響は大きいと思われます。

Indian power equipment makers oppose setting up of Chinese manufacturing units

中国最大の発電機器メーカーが、インド政府に対し、インドでのビジネスをやりやすくするため、各種要求を突きつけてきています。

主要な点は2つ挙げられており、関税とビザです。前者は、国内企業の強い要求から、インドでは、輸入発電機器に21%の関税をかけており、これを下げてほしいと。後者は、プラントに滞在する高度な技術者に対してのみ認めているビザの発給要件を緩和し、もっと簡単に人を派遣できるようにせよと、ということです。その他、国立電力会社が国内産の機器を優先的に購入しているのも、やめてほしいといってきています。 
インド政府としては、どれも国内企業との関係で調整が必要でしょうし、インドとしても逆に中国への輸出にかかる関税を下げろと、いう要求をしているようです。

日本から見ると、中国もインドも二大海外市場、とみなされていますが、インドへの進出については中国も狙っているようで、その意味では、近い将来、中国が欧州・韓国企業に加えて手ごわい競争相手になるのかもしれません。
 
でも、ビザの件は、日本人としても何とかしてほしいですよね。単なる出張の場合、ビジネスビザだと思いますが、これでもいちいちインド側からInvitation letterが必要になりますし、発給自体にも数営業日を要しています。雇用ビザになった日には、本当に大変で、私の場合もなんだかんだで最初の申請から1ヶ月弱を要しました。。。 ビザセンターのホームページに書いてあるとおりに申請したのに、後から後から追加要求が。。悪夢でしたね。

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